『 好 日 』
浮上に雲が浮かび 渚には波が打ち寄せる
ただそれだけの幸福
ー天然写真家 前田博史ー
少しだけ昔、高知県のある所にごく普通の家族がいました。
当時は四国には高速道路など無く、旅行もまだまだ贅沢な時代。
特に、横に長い高知県では県内でありながら室戸岬や足摺岬へ出かけるのは一泊旅行が当たり前の頃。
両親と妹二人の家族五人で出かけた一泊旅行で初めて太平洋
を見た女の子は目の前に広がる大海原に感動し
言葉もでないほどでした。
小学生の彼女には、大海原の先に見える海と空をくっきりと隔てる
まるで定規で引いたような線がとても不思議で
女の子「あの線は何?」
父親 「あれは『水平線」』よ」
女の子「あの線の向こうはどうなってるの?」
父親 「ナイアガラの滝って知ってるか?」
女の子「うん。テレビで見たことあるし、花火大会の時にあるよ」
父親 「あれと一緒よ」
女の子「...???」
父親 「滝よ」
女の子「えっ
滝
」
父親 「そうそう」
女の子「
」
その時、その水平線を一艘の大きな船が通っていくのが見えました
父親 「大丈夫。見よって。絶対落ちたりせん」
女の子「どうして
気づいてないかも
」
父親 「あの線をギリギリで通れる人じゃないと、船の免許は取れん。だから大丈夫
」
女の子「だって...
」
父親 「さぁそろそろ行こうか」
母・妹「行こう
出発
」
女の子「...どうしてみんな心配じゃないの...
」
女の子「もし落ちたら誰かがすぐ救急車呼ばんと...
」
父・母「おいていくよ
早くしなさい
」
女の子「
」
それから数十年が経ち、その間に両親は離婚しそれぞれの人生を生き、度重なる出来事に自暴自棄となった女の子も、すっかり大人になり思い出の中の両親の歳を追い越しました。
その後撤回されることのなかった『水平線』の嘘。
「こんなことあったね」「こんなこと言ったね」
そんな昔話をすることは一度もなく、女の子は父親とも母親とも疎遠になったまま見送ることとなってしまいました。
家族で過ごした大切な思い出の中の『太平洋』
記憶の中の『波』『空』『雲』そして『水平線』。
探し続けてやっと出会えたあの時の『太平洋』
懐かしく、少し哀しく、少し寂しい
そして思い出す...大好きだった父と母への想い
いつかまた二人に出会うことができるとしたら、やっぱり二人の子どもに生まれてたい...それだけで幸せ
再び出会えた『太平洋』を見つめながら心からそう願う一人の女の子がいました。
『あなたが愛を探していて、見つけられないのであれば
それは必ずあなたの人生のどこかに許しが足りないのです。
自分の人生をよく見つめ、自分の過去も調べ、
自分の人間関係のすべてを見て、自分に聞いてみましょう。
「どこを許していないのだろうか?自分を許していないのか、両親か?
子どもか、近所の人か、仕事のパートナーか、誰を許していないのだろうか?」
あなたがそれを見つけて許すと、エネルギーが流れ始め、あなたの人生に
新しい愛や人間関係がもたらされます。』
~by.ジョー・ヴィターレ(作家)~